【経営者必読】パスワード管理の新常識 – NIST新指針が示す中小企業のセキュリティ戦略

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【経営者必読】パスワード管理の新常識 – NIST新指針が示す中小企業のセキュリティ戦略

【経営者必読】パスワード管理の新常識
NIST新指針が示す中小企業のセキュリティ戦略

投稿日: 2025年11月11日 | カテゴリー: セキュリティ・IT経営 | ITワークデザイン株式会社

日本経済新聞で報じられた米国立標準技術研究所(NIST)の新しいパスワードガイドラインが、企業のセキュリティ対策に大きな転換点をもたらしています。これまで「常識」とされてきた「記号や数字を混ぜた複雑なパスワード」が、実は推奨されない時代になったのです。

要点: NISTは2025年夏、約3年ぶりにパスワード認証の指針を更新。記号や数字の混合を強制するルールを廃止し、「複雑性」よりも「長さ」を重視する方針に転換しました。

なぜ「複雑なパスワード」が推奨されなくなったのか?

従来、多くの企業では「大文字・小文字・数字・記号を組み合わせた8文字以上のパスワード」を従業員に求めてきました。しかし、この方式には致命的な欠陥があったのです。人間は複雑なルールを課されると、「P@ssw0rd1」や「Welcome123!」のような、予測しやすいパターンに頼ってしまう傾向があります。

攻撃側のAI技術は急速に進化しており、こうしたパターン化されたパスワードは容易に解読されてしまいます。NISTの調査によれば、複雑性の強要はかえって脆弱性を生み出していたのです。

パスワードの長さと複雑性の比較
図1: パスワードは「複雑性」よりも「長さ」が重要(出典: Keeper Security)

新指針が示す3つの重要ポイント

項目 従来の考え方 新指針(NIST 2025)
パスワードの長さ 8文字以上 最低15文字を推奨
文字種の混合 大小英字・数字・記号の組み合わせを強制 強制しない(任意)
定期的な変更 3ヶ月ごとに変更を義務化 流出が疑われる場合のみ変更
秘密の質問 ペットの名前などで本人確認 推奨しない
ポイント1: 長いパスワードは総当たり攻撃に強い。15文字以上のパスワードなら、記号を使わなくても十分な強度を確保できます。

ポイント2: 定期的な変更の強制は、かえって弱いパスワードを生む原因に。「Password1」→「Password2」のような安易な変更を誘発します。

ポイント3: ペットの名前などの秘密の質問は、SNSから容易に推測可能。もはやセキュリティ対策として機能しません。

中小企業が今すぐ取り組むべき対策

この新指針を踏まえ、中小企業・中堅企業の経営者が実施すべき具体的なアクションをご提案します。情報セキュリティは経営リスクそのものです。今こそ、実効性のある対策に投資すべきタイミングです。

実施すべき3つのアクション

  • パスワードポリシーの見直し: 社内規程を新指針に基づいて更新。複雑性の強制ルールを撤廃し、最低15文字以上の長さを基準に設定しましょう。
  • パスワード管理ツールの導入: 従業員が長く複雑なパスワードを記憶する負担を軽減。LastPass、1Password、Bitwarden等の法人向けツールの導入を検討してください。
  • 多要素認証(MFA)の全面展開: パスワードだけに頼らない認証体制を構築。スマートフォンアプリやセキュリティキーを活用した二段階認証を必須化しましょう。

セキュリティ投資は「コスト」ではなく「経営資産」

情報漏洩やランサムウェア攻撃による被害額は、年々増加しています。中小企業においても、一度のインシデントが事業継続を脅かす事態に発展するケースが後を絶ちません。適切なパスワード管理は、最も基本的かつ効果的なセキュリティ対策です。

NISTの新指針は、「人間中心」のアプローチへの転換を示しています。従業員が実際に守れるルールを設計し、適切なツールでサポートすることで、組織全体のセキュリティレベルを底上げできます。経営者の皆様には、この機会に自社のパスワード管理体制を再点検していただくことを強くお勧めします。

まとめ: 「複雑なパスワード」から「長いパスワード+多要素認証」へ。新時代のセキュリティ戦略は、技術と人間心理の両面から設計する必要があります。