サイバー災害は「ITの問題」ではない。「経営の問題」だ。

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サイバー災害は「ITの問題」ではない。「経営の問題」だ。 | ITワークデザイン株式会社 ブログ

サイバー災害は「ITの問題」ではない。「経営の問題」だ。〜ランサムウェア攻撃から企業を守る、IT経営推進者の視点〜

ITワークデザイン株式会社

2025年10月31日

1. 8兆円の損失が示す「サイバー災害」の現実

先日、日本経済新聞に掲載された「サイバー災害(中)ランサム攻撃、損失8兆円 企業マヒ連鎖、日常止める」という記事は、ランサムウェア攻撃の深刻な実態を浮き彫りにしました。米民間調査会社によると、2025年の世界のランサムウェア被害額は8兆円を超える見通しであり、これはもはや一企業のセキュリティ事故というレベルを超え、「サイバー災害」と呼ぶべき危機的状況です。

ランサムウェア攻撃の恐ろしさは、単にシステムが停止することに留まりません。

  • 事業活動の停止: 生産ラインの停止、物流の麻痺、顧客対応の停止など、企業活動の根幹が断たれます。
  • サプライチェーンへの連鎖: 自社だけでなく、取引先や関連企業にも被害が及び、社会全体のマヒを引き起こします。
  • 信用の失墜と賠償: 顧客情報や機密情報の漏洩による信用の失墜、巨額の賠償責任が発生します。

これらの被害は、IT部門の努力や、最新のセキュリティツールを導入するだけでは防ぎきれない領域にまで及んでいます。

2. なぜ「ITの問題」ではないのか?

ランサムウェア攻撃の報道に接すると、「IT部門のセキュリティ対策が不十分だった」という論調になりがちです。しかし、この問題の本質は、IT技術の範疇を超えた「経営」そのものにあります。

(1) リスクマネジメントの欠如

サイバー攻撃を「起こりうるリスク」としてではなく、「IT部門が何とかするもの」として捉えている経営層の認識こそが、最大の脆弱性です。事業継続計画(BCP)の中に、大規模なサイバー攻撃への対応が組み込まれていなければ、企業の生命線は簡単に断たれてしまいます。

(2) 投資判断の誤り

セキュリティへの投資は、目に見える売上には直結しにくいため、後回しにされがちです。しかし、ランサムウェアによる事業停止や復旧にかかるコストは、事前のセキュリティ投資を遥かに上回ります。これは、「守りの投資」を軽視した経営判断の失敗に他なりません。

(3) 組織横断的な対応能力の不足

インシデント発生時、IT部門だけでなく、経営層、広報、法務、事業部門が一丸となって動けなければ、被害は拡大します。平時から、誰が、何を、いつまでに判断し実行するのかという組織的な対応プロセスが確立されている必要があります。

ランサムウェアの警告画面と、真剣に議論する経営層のイメージ。サイバー危機が経営判断の場に直結している様子を表現。

図:技術的な危機(ランサムウェア)が、経営判断の場に直結する様子(イメージ)

3. ITワークデザインの「ケース研修」が示す、IT経営推進者の役割

私たちITワークデザインが提供する「変革推進人材育成研修(ケース研修)」は、まさにこの「サイバー災害は経営問題である」という認識に基づいています。

この研修では、ITコーディネータのフレームワークであるプロセスガイドラインを体感的に学びます。これは、ITを「単なる道具」としてではなく、経営戦略を実現するための重要な要素として位置づけ、経営者と現場をつなぐことができる人材を育成するための体系的な手法です。

研修を通じて、受講者は以下のような視点を養います。

  1. 経営視点でのリスク評価: サイバーリスクが事業継続に与える影響を、IT担当者ではなく経営者の視点から評価し、優先順位をつけられる。
  2. 戦略的なIT投資: セキュリティ対策を「コスト」ではなく「事業継続のための戦略的投資」として位置づけ、経営層に提言できる。
  3. 組織変革の推進: インシデント対応を含む、ITを活用した組織全体の変革をリードできる。

ランサムウェア攻撃から企業を守る鍵は、最新の技術導入だけでなく、ITと経営の橋渡しができる人材の育成にあります。

4. 経営層への提言:今こそ「IT経営」の視点を

サイバー攻撃が「災害」となった今、経営層に求められるのは、ITを単なるコストセンターとして見るのではなく、事業継続と成長の生命線として捉え直すことです。

  • ITリスクの経営課題化: サイバーリスクを、財務リスクや市場リスクと同等に重要な経営課題として位置づけ、取締役会で議論する。
  • IT経営人材の育成: ITの技術と経営の両方を理解し、有事の際に適切に判断・行動できる人材を育成する。
  • 平時からの備え: BCPに基づいた訓練を定期的に実施し、組織的な対応力を高める。

ITワークデザインは、町田の地から、ITと経営の視点を融合させ、企業の持続的な成長を支援してまいります。

参考情報: